君を愛していいのは俺だけ

「どうした?」

 前を行く彼らに遅れを取っていたら、佐久間さんが足を止めて声をかけてきた。


「なんでもないです。すみません」

 小走りで駆けよる墨田さんに続いて、私も追う。
 だけど、佐久間さんと同じように振り返っている彼と目が合って、胸の奥がドキッとした。


 彼は、噂になっていることを知っているのかな……。
 もしそうだったら、きっと迷惑だろう。社員とのコミュニケーションを大切にしている彼が、噂のせいで社員に距離を置かれるのは、望んでいないはずだ。

 でも、この出張に私を連れてきてくれたのは彼で。
 仕事と割り切れば済む話かもしれないけれど、そんな噂があるなら私を選ばずに、滝澤さんだってよかったのに。


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