君を愛していいのは俺だけ

 約二時間の空の旅は、隣に座った墨田さんが眠ってくれていて助かった。あんなことを言われたあとでは、いつボロが出るかと気を張って話さなくてはならなかっただろう。


 長崎空港を出てエアポートライナーに乗り、長崎の市街地へ。
 駅前には路面電車が走っていて、それだけで感動ものだ。初めて見る街の景色は、どれもが目新しくてわくわくする。

 駅前から宿泊するホテルまでは、無料送迎バスで向かうことになった。
 出発したバスは浦上川を渡り、稲佐山の中腹にあるホテルで停まった。昼間に見る景色もいいけれど、ネットで見た夜景が楽しみだ。

 
 チェックインを済ませ、荷物を置きに部屋へ向かう。
 私の隣室は墨田さん、佐久間さんの順で並び、社長は私と一番離れた部屋。
 意識して離れた部屋にしておいてよかった。彼と隣り合っていたら、墨田さんに疑われたかもしれない。


「秋吉さん、そろそろ行くよ」
「今行きます!」

 墨田さんがドアの外から声をかけてきて、私はバッグを持ち、部屋を出た。


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