君を愛していいのは俺だけ

 工場の送迎マイクロバスに専門学校の教員や学生十五名と一緒に乗りこんだ。
 飛行機に乗っていたのと同じように、隣に墨田さんが座った。一方、社長はというと、佐久間さんと前列に座り、専門学校の教員と話している。


「秋吉さんって、なんでSUNRISERに来たの?」
「前職がアパレルだったので、僅かですけど経験を活かせたらと思ったんです」

 墨田さんがそれとなく聞いてきたけど、社長目当てで入社した人もいると言っていたから、彼女の反応が気になる。


「表向きの答えがそれってことでしょ? 本当は社長狙い?」
「違います! 本当にSUNRISERに入りたいと思ったからで」
「墨田さん、工場のパンフレット持ってる?」

 前の席から社長が話しかけてきて、彼女はバッグからファイルを出してパンフレットを探している。

 その間、彼は私にほんの少しだけ微笑んでくれて、もしかしたら助けてくれたのかもしれないと思った。


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