君を愛していいのは俺だけ
マイクロバスに揺られること一時間強。
おそらく業界の人間でなければ、聞きなれない社名の看板が見えてきた。
今回は受注後に納品された生地に汚れや傷などがないかをチェックし、生地を広げて本来の状態に戻す“延反(えんたん)”作業と、“アパレルCAD”で服の設計図である型紙の作成を行い、自動裁断機で生地の裁断をするまでの流れを見学することになっている。
実際に作業させてもらえるテスト機もあって、専門学校に入学したばかりの学生たちは楽しそうに見学していた。
私も服飾専門学校を出たわけではなく、四大卒でアパレルに入社したから、この数年で学んだことが多い。でも、実際に服を作ることはないし、デザインをすることもないから、専門的な知識を学べるいい機会になった。
昼食を挟み、十五時過ぎに工場を出た。
日が傾いてきた空を仰ぎつつ、再びマイクロバスで宿泊施設へ戻った。