君を愛していいのは俺だけ

「長崎は、和華蘭(わからん)文化っていうのがある。歴史で昔習っただろ? 鎖国のこと。日本と中国とオランダが混ざった、独特な文化があるんだよ」

 平然と会話をしているけれど、胸の奥はドキドキが止まらない。
 習っただろ?なんて言われたら、家庭教師をしてくれていたあの頃を思い出す。


「夕食は、美味いところに連れて行ってやるから」
「楽しみにしてます」

 ホテルに到着して、ロビーのソファで専門学校の教員と十分ほど話してから自由時間になった。

 売店で飲み物と地元のお菓子『クルス』を買って、自分の部屋に戻る。
 陽太くんは今頃なにをしてるんだろう。空き時間とはいえ、専門学校の教員と仕事の話をしていたりするのかな。それとも、佐久間さんとお茶でもしてるかな。

 もしひとりでいるなら話したいけれど、そうはいかないだろうなぁ。
 これ以上、噂の種になるようなことは避けなくちゃ。


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