君を愛していいのは俺だけ

 十六時前になり、部屋のドアがノックされた。


「ご飯に行くみたいだけど、出れる?」
「はい」

 墨田さんが顔を覗かせ、そのまま部屋を出ると佐久間さんと社長もいて、ホテルの前でタクシーを拾った。
 佐久間さんが助手席を選んだから、必然的に後部座席には他の三人が座ることに。
 先に乗り込んだ社長に続き、墨田さんに次を譲った。


「いいよ、秋吉さん乗って。私、窓側じゃないとダメなの」

 さっきバスで通路側だったのに……と思いつつ、お先にと断りを入れて乗り込んだら、予想通り密着度は高い。
 行先までの道中でタクシーが揺れるたびに、右隣の彼にぶつかって気まずい。
 顔に出ないように意識しても、彼のスーツが不意に触れるだけでドキドキしてしまった。


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