君を愛していいのは俺だけ

 長崎名物のカラスミや、店自慢の自家製スペアリブ、鯨の刺身に季節野菜のかき揚げなど、一品料理がどんどん出てきて、お腹がいっぱいだ。
 デザートのカステラを使ったケーキは入らないと思っていたのに、あっさりとしているのにコクがあって、とても美味しかった。


「よく食べるね」
「女子のスイーツは別腹なんです」
「知ってるよ、それくらい」

 佐久間さんと墨田さんは仲がいいのか、とてもラフに話している。
 私も社長と楽しく話してみたいけど、歓迎会の一件もあるし、社長と社員の一線を意識させられてるし、そもそもどんな話をしたら彼が楽しいと思ってくれるのかもわからない。

 この場で思い出話なんてできるはずもないし……。


「美味かっただろ?」
「はい、とっても!」

 食後のコーヒーを飲んでいる彼に、至福の笑みを向ける。こんなに美味しい食事ばかりあるなら、また来てみたいと思った。


< 86 / 431 >

この作品をシェア

pagetop