君を愛していいのは俺だけ

 陽太くんは九州に何度も来ていたみたいだけど、全部仕事ではなかったはず。
 誰と来たのかなぁ。この夜景も、一緒に来た誰かと眺めたりしたのかな……。

 空白の七年にいた、彼を知りたい。
 陽太くんは、この再会をどう思ってるんだろう……。


 不意にドアがノックされて足を向ける。
 ドアガードをしたまま、細く開けると目の前に缶ビールが出てきた。


「ちょっと話さない?」
「えっ!? 社長!!」
「シーッ! 聞かれたらどうすんだよ。早く入れろ」
「っ、はい!」

 まさか、陽太くんとふたりきりになるなんて……。


「しゃ、社長も温泉に入られたんですか?」
「入ったよ」

 緊張で無難な話しかできず、私の横をすり抜けて勝手に部屋へ入っていく彼の背を見送る。


「っていうか、秋吉さんって不用心だね。佐久間が来ても部屋に入れただろ」
「そんなことしません!」

 館内着を着た彼は、備え付けのドレッサーに缶を置き、腕を組んで私を見つめた。


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