イジワル騎士団長の傲慢な求愛
この先、セシルをあの男の魔の手から守ってやらなければならない。
どうすればよいか思案していると。

「――ルーファス!!」

声に振り向けば、息を切らし走り寄ってくるルシウスの姿。
普段冷静な弟がここまで焦るなど、滅多にあることではない。
なにより、一緒にいるはずのセシルはどうしたのか。なんだか嫌な予感がした。

「どうしたルシウス。セシルは?」

ルシウスは身を屈め膝に手を当てて、肩を大きく上下させながら絶え絶えに答える。

「――攫われ……たんだ……黒ずくめの、仮面の男たちに……」

ざっと背筋に緊張が走る。守らなければと思っていた矢先に、このザマか。
それを聞いたフェリクスやシャンテルたちも平静ではいられなかった。

「どういうこと!?」

「攫われたとは!?」

「庭園を抜けた先の、客間のある廊下で……突然姿を現した三人組の男が、無理矢理彼女を攫っていった……すまない。剣を突きつけられて、助けることが出来なかった」

「……あいつらか」

いても立ってもいられず、ルーファスは会場の外へ向かった。
早く彼女を助け出さなければ。なにをされるかわかったものではない。
現に、前回姿をあらわしたときには、あろうことか強姦しようとしていたのだ。

もしも彼女に手を出そうものなら――ただでは済まさない。

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