イジワル騎士団長の傲慢な求愛
その日の夜遅く。

「そんなところでどうされました?」

背中から声を掛けられて、セシルは思わずひっ、と悲鳴を上げた。

振り返れば、すでに政務を終わらせて軽装に着替えたルシウスが立っていた。きっと自室に戻って寝るところだったのだろう。

セシル自身も夜着にガウンというルシウスの上をいく軽装で、廊下の曲がり角からルーファスの部屋をじっとうかがっていた。その行動は不審そのもので、できることなら気づいてほしくなかった。

「兄の様子を見にきたのですか? もうとっくに政務も終わっているので、すぐに姉さんの部屋に向かうと思いますよ?」

にっこりと微笑んでくれるルシウス。年上ではあるけれど、結婚してからはセシルのことを姉さんと慕ってくれている。
そんな彼に探りを入れるのは申し訳ないと思いながらも、セシルはさり気なくルーファスの近況を聞いた。

「ルシウス、最近、ルーファス様は忙しかったみたいだけれど、体調は大丈夫かしら……」

「ええ。厄介な問題が何点か続いて忙しかったことは確かですが、もう山は越えたので、ここ数日は休めていると思いますよ」

「忙しかったって、寝る間も惜しむほど?」

「身体は資本ですから、寝る間を惜しんで政務をこなすなんて滅多にありませんよ。いつもと変わらず、姉さんのお部屋にもいらしてたでしょう?」

言葉そのままに笑顔を浮かべていたルシウスだったが、その質問の違和感に気がついたようだ。
そもそも、セシルの部屋に来ているようなら、寝る間を惜しんでいるかどうかなど聞くはずもない。
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