イジワル騎士団長の傲慢な求愛
ひと晩明けて。
宮廷の大会議場に、きらびやかな衣装を見に纏った貴族たちが集まっていた。
その光景はまるで絵画のように荘厳だが、当人たちからすれば生きた心地はしないだろう。

この会合は、彼ら貴族にとって吊るし上げの場である。
王族に反逆する意思のあるものがいないか、疑惑の証拠を持ち寄っては問い詰め、芽を潰す。

今日もピリピリとした緊張感を持ったまま、会合が幕を閉じた。
ローズベリー家についてなんの議題も上がらなかったことにホッとして、セシルは胸を撫で下ろした。

庭園に面した回廊を歩いていると、庭園の脇に、先ほど吊るし上げを食らっていた新興伯爵家のエメ伯が、従者とともに蒼白な顔で腰を休めているのが見えた。

洗礼のようなものだと、フェリクスは表情も変えずに言っていたが、セシルはいずれその追及が自分に及ぶのではないかと、他人事では片付けられなかった。

自分が男だと偽っていることがバレたら――。

弱気になってしまうのは、きっと体調が優れないからだ。
昨晩から、締め付ける包帯のせいで、食欲もないし吐き気も収まらない。

会議場にいたときは、緊張感と集中力でなんとか意識を保っていたが、一度気が緩んでしまったが最後、眩暈で倒れそうだった。
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