イジワル騎士団長の傲慢な求愛
誰もが寝静まったであろう夜更けに、ノックの音が響いた。

「セシル……もう寝てしまったか?」

セシルは起きていた。というより、泣き続けて眠れなかったというのが正解だ。
ノックを無視すると、勝手に扉が開かれて、足音がひとつベッドに近づいてきた。

「セシル。起きているな」

ルーファスからは、ベッドの上の丸く膨れ上がった毛布だけが見えているはずだ。
その中で、嗚咽をかみ殺しているセシルの姿は見えていない。いまのところ。

「出て来い」

ルーファスに毛布を剥ぎ取られそうになるが、セシルは引っ張り返して必死に抵抗した。
こんな酷い泣き顔でルーファスの前には出られない。

「……やめて……」

「いいから。顔を見せろ」

「いや……っ!」

けれど、とうとう毛布が剥がされて、布団の上で丸くなるセシルの姿が暴かれてしまった。
もちろん、真っ赤になっている瞳と、涙で濡れたシーツも。

「……こんな時間になんだっていうの」

慌てて手の甲で瞳を拭い、寝ぼけただけのように見せかけて、せめてもの強がりをする。
けれどそんなごまかしが通用するわけはない。

「俺のいないところで隠れて泣くな」

「泣いてなんか――」

その続きはルーファスの力強い抱擁に邪魔された。唇が彼の胸に押しつけられて、塞がれる。
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