イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「……私、もう拒んだりしないから……」

告げた声は震えていた。彼の愛を一心に受けることができるならば、迷うことなんてなにもない。

「焦らなくていい。そうしたいと思えるときで――」

「今、そう思ってる」

彼を失いかけてボロボロに崩れてしまった心は、もうそうしなければ治らないとわかっていたから。

「……抱いてほしいの」

言葉とともに、瞳から溢れた感情がひと雫、頬を伝って流れていく。
ルーファスにほっとしたような優しい笑みが宿る。両手でセシルの頬を包み込んで、そっと指で耳をなぞる。

「お前からそんな言葉が聞けるとは思わなかった」

「だって、言わないとしてくれないって、あのとき……」

「少し苛めてみたくなっただけだ。本気じゃない」

「ず、ずるい……」

「でも――」

ルーファスの唇が、そっとセシルの額に触れ、鼻筋を通り、唇へと落ちてきた。

「聞けてよかった。俺は少し不安になっていたのかもしれない。お前の意思も確認せずに、結婚式に連れ出して、無理やり将来を誓わせてしまった」

申し訳なさそうな顔のルーファスが珍しくて、胸がきゅうっと恋しくなる。

「そんな顔しないで。私はいつだってルーファスの強引さに救われてるんだから……」

臆病で踏み留まってしまうセシルの手をルーファスは引き導いてくれる。
見たことのない奇跡のような世界に連れ去ってくれる。
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