イジワル騎士団長の傲慢な求愛
ルーファスはセシルを馬車のキャリッジの中まで丁寧に送り届け、座席の上に座らせた。

頭の布を剥がされると、あの白金の髪と深蒼の瞳が目の前にあって、セシルはごくりと喉を鳴らした。

その顔は、見れば見るほど舞踏会で出会った仮面の君と同じもの。
セシルはなにかの間違いだと自分に言い聞かせながらも、疑わずにはいられなかった。

気づかぬうちに睨みつけてしまっていたらしい。「……なんだ」ルーファスが不満そうに眉をひそめる。

「……アデル様」キャリッジの外からはフェリクスの諌める声。ちゃんとお礼を言えということらしい。

本人の性格と口の悪さには難ありだが、ここまで親切に運んでくれたことは事実。

「……感謝する。悪徒から助けてもらった上に、ここまで運ばせてしまって迷惑をかけた」

ルーファスを上目遣いで見上げると、彼は満足そうにふっと口もとを緩ませた。

「素直に言えるじゃないか」

突然、頭の上に大きな手のひらが乗ってきて、セシルの黒髪がぐしゃぐしゃに乱された。
セシルは一瞬なにが起きたのかわからず呆然としたが、次の瞬間にはバカにされたのだと理解できた。

「こ、子ども扱いするな!」

「子どもだろう」

「このっ……!」

思わず振り上げてしまった手首をあっさりと掴み取られて、セシルはハッと身を固くする。
ルーファスは新しく見つけた玩具と戯れる子どものごとく、楽しげに、容赦なく、顔を近づけて来る。
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