イジワル騎士団長の傲慢な求愛
深い蒼のガラス玉に映る自分の姿を見つめながら、困惑したセシルは強がりを叫んだ。

「な……なんだ!? なにか文句があるのか!?」

「お前は本当に、女こどものような顔をしているな」

突然顎をすくわれて、興味深そうにまじまじと見つめられ、気が動転するセシル。

「や、やめっ……」

耳まで真っ赤にしてうつむいたセシルを見て、ルーファスは余計に表情を嬉々とさせた。

「なんだ? 俺のことが好きなのか?」

「なっ……どうしたらそんな解釈になる!? 気持ち悪いことを言うな!!」

「そんな寂しそうな顔をしなくとも、いずれまた会える――」

ルーファスは不敵な笑みをこぼしてセシルを一瞥すると、馬車から降りて背中を向けた。
去り際に、軽く片手を掲げる。

「――神のお導きがあれば、な」

「っ!!」

去り行くルーファスの捨て台詞に、セシルは雷に打たれたような衝撃を覚える。

その言葉は仮面の君のものだ。

(なんで彼がそんなことを言うの……?)

失望だろうか、それとも期待だろうか、言い知れぬ感情が胸の中を占拠して、セシルの瞳がじわりと滲んだ。
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