イジワル騎士団長の傲慢な求愛
自分よりもずっと太くて力強い腕、筋肉質な胸板。
セシルはルーファスに抱きつきながら、意図せず本物の男性のたくましさを見せつけられてしまった。

胸が高鳴るのは、セシルがまだ女性であることを捨てきれていないからだろうか。
どうしようもなく恥ずかしい。

ルーファスの大きな手がセシルの脇のあたりに触れている。
胸の膨らみに気づかれかねない位置だ。あと少し正面にずれたら、完全に女だとバレてしまうだろう。
いや、それ以前に――

(そんなところ、触れないでよ……)

危うい場所を男性に触れられているということ自体にドキドキとしてしまって気が気ではない。

被せられた布の下で落ち着けないでいると、不意に耳の辺りでルーファスが囁いた。

「確かに、抱き心地は完全に女のものだな。襲いたくなる気持ちもわかる気がする」

突然甘い声を出されて、セシルの頬は火がついたように熱くなった。布を被っていたのが不幸中の幸いだ。

「な、なにをっ……」

「冗談だ。男などに手を出すものか」

くつくつと喉の奥で笑われて、バカにされたことに気がついた。
なんて腹の立つ男だろう。平手うちくらいかましてやりたいところだったが、ぐっとこらえて平静さを取り戻す。
< 25 / 146 >

この作品をシェア

pagetop