【完】溺愛飛散注意報-貴方に溺れたい-
ガラガラっ
少し乱暴に、半分だけ硝子のはめ込まれた引き戸を開くと、そこには口の端から血を流したせんぱいが、いる。
「せっ」
「おっと。未麻ちゃ〜ん。あんたは此処でコイツがどうなるか、大人しく見てて貰わなきゃなぁ?」
相変わらず、気色の悪い笑みを零している男は、私を近くにあった椅子に座らせると、せんぱいの周りにいた数人に目配せをした。
すると、その内の1人が、せんぱいの髪を引っ張り上げる。
「よう、寺門〜。ヒロインの登場だ。おら、しっかり反撃して来いよ〜。ま、そんな力ももう残っちゃいねぇだろうけどなっ!」
げしっ
容赦なく、せんぱいの横腹にその人の蹴りが入って、せんぱいが小さく唸った。
「かはっ…」
その呻き声に、私の口から自然と声が零れる。
「せんぱ…」
「…み、ま…?」
「せんぱい!」
「…んで…お前が…ここ、に…」
せんぱいは、絞り出すような声で、私を責めた。
その声を聞いて、私は、居ても立ってもいられなくなる。
「せんぱいっ!せんぱいっ!」
「おら、うるせーぞ。お前は寺門を締めた後で、たっぷりと可愛がってやるから、大人しくしてろ!」
ぎりりっ
掴まれた手が、痛みで麻痺を起こす。
思わずしかめ面をした私に、せんぱいが怒りを含んだ声で、叫んだ。