過保護なドクターととろ甘同居
「車、預けてくるから先に入ってて」
「あ、はい」
車を降り先生の車を見送ると、一人エントランスへと向かう。
ドアマンの人に綺麗に頭を下げられただけで、無駄にキョドッてしまいそうになった。
いつだか、まだ俊くんと上手くいっていた頃、『こんな豪華なところでご飯でも食べてみたいね』なんて言ったことがあった。
それは夢のまた夢で、結局は実現しなかったけど、一度だけ昼下がりに一人で訪れて、一階のティールームでお茶をしたことがあった。
一杯、千円近くするコーヒーを大して味わうこともできず、一緒に頼んだケーキプレートも上品とは言えないスピードでいただき席をあとにした。
自分へのご褒美で行ってみたけど、敷居が高くて落ち着けなかった思い出がある。
エントランスを入ると、ロビーはホテル上階までが吹き抜けとなっていて、思わず見上げてしまう作りをしている。
そのロビー中央には噴水や何メートルもある木々が青々と茂り、今が真冬だということを忘れてしまいそうになる室内庭園がある。
本当なら今ごろ家に着いて冷蔵庫の中のものをレンジでチンしているはずだったのに、急にこんなところに来てしまったことが現実味にかけている。
しばらくその美しい光景に見入っていると、ポンと肩を叩かれる。
「お待たせ」とやって来た先生は、「行こうか」と庭園の先へと歩いていった。