過保護なドクターととろ甘同居


モニターに目を向けたまま私の話を聞いた先生は、キーボードを叩きながら「陣痛始まってそうだな」と呟く。


「いいよ、先診るから、診察台通してくれる?」

「あっ、はい!」


デスクを立ち上がった先生を目に、診察室を出て患者さんのいる待合室へと急ぐ。

待合いの椅子に掛ける鈴木さんの元に向かうと、三歳くらいの女の子と二人で来院していたことに気付いた。


「鈴木さん、先生が先に診察するとのことなので、診療室の方にどうぞ」


大きなお腹を抱え、女の子の手を引く鈴木さんに付き添い、診察室に戻る。

奥の内診台へと案内すると、先生が診察台の向こうから声を掛けてきた。


「鈴木さん、こんにちは。トイレに行かれてあれ?って思われたのは何時くらいでした?」

「あ、こんにちは。えっと、確か八時前くらいだったと思います」


連れの娘さんを預かり、内診台の入り口のカーテンを開ける。

不安そうにカーテンの向こうに消えるお母さんを見つめる女の子の横にしゃがみ込み、小さな背中にそっと触れた。

< 55 / 144 >

この作品をシェア

pagetop