過保護なドクターととろ甘同居


「付き合わないか?」

「えっ、私が、ですか?」

「飲めないのか」


グラスを片手に、先生は端正な顔に微笑を浮かべる。

テーブルにあるのは、見るからに値が張りそうなウィスキーとロックアイス。

お酒は飲めなくはないけれど、私が飲むのはビールやチューハイばかり。

ウィスキーなんて大人の飲むお酒は今まで未体験だ。


「飲めなくはないですけど……」


控え目に答える私を目に、先生は「じゃあ付き合え」とソファーを立ち上がる。

リビングからダイニングキッチンへと続く扉の先に消えていくと、すぐに同じロックグラスを手に戻ってきた。

座っていた位置を少しずれて掛け直し、黙って新しい一杯を作り始める。

大きな氷がグラスに入り、カランといい音が鳴り響いた。


「何かで割るか」

「えっ、あ、どちらでも、大丈夫です」

「結構キツめかもしれないぞ」


作ってもらっておきながらあれこれ注文をするもの悪い気がして、「少しずついただきますので」と答えてみる。

私の返事を聞いた先生は「そうか」と言ってグラスに半分くらいのウィスキーを注いだ。

< 67 / 144 >

この作品をシェア

pagetop