過保護なドクターととろ甘同居


覆うようにして重なった突然のキスは、味わうようにして戸惑う私の唇を食む。


「……ッ、ンっ……せ、んせ」


一瞬離れた唇の隙間から声を出してみても、言葉を遮るようにしてまた口付けられる。

今まで知らなかった巧みなキスに、体の力が徐々に抜けていく。

どうすることもできずに目を閉じていると、そっと触れていた柔らかい感触が離れていった。


「慰めてやろうとは、思ってない」


取り上げたグラスがテーブルに置かれる音が聞こえる。

薄らと開いた目に映った先生は、近距離でじっと私の顔を見つめていた。

今になって心臓がドクドクと音を立て始める。

この突然起こった状況のせいなのか、はたまた酔いが本格的に回ってきているのか、頭がどうにも働かない。

言われた意味もよくわからないまま、とろけかけた顔をただ先生に向けていた。


「でも……忘れたいなら手伝ってやる」

< 72 / 144 >

この作品をシェア

pagetop