過保護なドクターととろ甘同居


「相手、職場の上司だったらしいの。見た感じ、課長か部長か、役職付きの人って感じだったわ」


木之本さんの説明に、宮城さんは「何か偉そうな態度だったもんね」と厭味を込めた口ぶりで付け足す。

そして更に「しかも、妻子持ちって内緒にして付き合ってたらしいから最悪よ」と言った。


「じゃあ、それで困るから、堕ろせって騒いだんですか?」


聞いているうちに、何だか私までムカムカとしてきてしまっていた。

木之本さんはどこか悲しそうな笑みを浮かべ、「そんなとこね」とポツリと呟く。


私も、付き合ってた人に裏切られて、相当なダメージを受けた。

だけど、相手には実は奥さんも子どもいて、身籠った子を堕ろせと言われた滝瀬さんは、私なんかと比べられないほどの傷を負ったに違いない。

いや、むしろ比べてはいけない話だ。

さっき会った、穏やかな滝瀬さんの顔が頭を過ぎる。

今聞いた以上に詳しい話はわからない。

だけど、それでもお腹の子を産んで育てるという選択をして、あんな風に笑顔で振る舞える彼女は、きっと強い人なんだと思えた。


「でさ、そんなことがあってから、院長が滝瀬さんを気に掛けてるみたいなのよ」


しんみりしてしまったスタッフルームに、再び宮城さんのどこか弾んだ声が聞こえた。

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