過保護なドクターととろ甘同居
「大変、て……?」
「うん。ちょっとね、出産するかしないか、揉めたのよ、お腹の子の父親と」
木之本さんの告げた内容に、食べようとしていた箸の動きが止まってしまう。
黙って話の続きを待っていると、今度は宮城さんが口を開いた。
「あれは結構衝撃的だったわよ……。だって、診察室で相手の男が怒鳴ってるんだから。あんなの、ここに勤めて初めてだったわよ」
「そうね……それこそ、三枝さんの前の彼氏なんか滝瀬さんの相手に比べたら可愛いものよ」
「暴れ出すんじゃないかってくらいだったわよね?『今すぐ堕ろせ!俺は認めないぞ!』とかってね」
当時のことを振り返る二人は、続けざまにため息を吐き出す。
「その時ね、院長がさ……」
「先生、が……?」
「キレちゃったのよ、その相手に」
宮城さんの言葉に、つい「えっ」と声が漏れていた。
キレた、って……。
「ああ、先生もあんな感じで冷静な人だから、キレたって言っても殴ったとかじゃないわよ? でも、胸ぐら掴むとこまではいったわよね」
その時の様子をジェスチャーでやってみせる宮城さん。
木之本さんがふふっと小さく笑う。
「その相手に次々正論を並べてね。院長、頭がキレるから、相手も最終的には言い返せなくなっちゃって」
「そんなことが、あったんですか……」