過保護なドクターととろ甘同居


病院へと戻り、三階まで上がって、階段を登りきったところでやっと足が止まった。


やっぱり、先生と滝瀬さんは、もう医師と患者の関係ではないこと。

それを知ってしまった今、複雑な心境が私に襲いかかっていた。

病院で相手に子どもを堕ろせと騒がれて、先生が仲裁に入ったと聞いた。

自分の時のことを思い出し、重ねてみる。


『良かったと言うほど妊娠を望まれていないなら、なぜ避妊具を使わないのでしょうか』


私が初めてここに訪れた時、先生は俊くんに鋭い視線を向け、ズバリ厳しい一言を浴びせてくれた。

あの時、妊娠してないと聞いて喜ぶ俊くんにガツンと言ってくれたような気がして、何だか少し嬉しかった。

先生は医師として当たり前のことを言っただけのことかもしれない。

だけど、私にはちょっと庇ってもらったような、そんな気がしてありがたかった。


滝瀬さんも、きっと同じだったのだと思う。

先生が相手の男性に厳しく言ってくれたことは、心の支えになったのだと想像できた。

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