過保護なドクターととろ甘同居


先生の腕に抱かれ、哺乳瓶のミルクを飲む赤ちゃんをじっと見つめる。

先生に手伝えと言われて下に下りていくと、二階の入院病棟でミルクを作る指示を受けた。

初めてのことでまごまごしてしまったけど、先生の言う通り哺乳瓶にキューブ状のミルクを入れ、お湯を注いで適温に冷ました。


「赤ちゃんて、お腹が空くと本当にあんなに泣くんですね……」


私の素朴な感想に、先生はフッと笑う。

「何でも泣いて訴えるからな」と赤ちゃんの顔を見つめながら答えた。

その眼差しが優しくて、胸の辺りがキュンと震えてしまう。


どうして滝瀬さんの子を預かることになったのか。

ミルクを作りながら尋ねてみると、先生はその経緯を隠さず話してくれた。

私が何も知らないという認識の元、滝瀬さんの事情から説明をし、今日はこの赤ちゃんの父親の男性と滝瀬さんが会うという。

今後のことなど、大切な話し合いをするために出掛けたということだった。

その相談を受けていたらしい先生が、その日は病院で赤ちゃんの保育をすると、買って出たという、そういう話だったのだ。


赤ちゃんを連れ帰ってきた先生を目にして、もしかしたら、これから先生と滝瀬さんがここで一緒に暮らしていくかもしれないなんて、さっきはそんな展開まで考えてしまっていた。

それも全て、私の広がりすぎた妄想にすぎなかったのだ。

自分の巧みな妄想力にはつくづく呆れる。

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