初恋マニュアル
まだ残暑の厳しい9月。


日差しは厳しいけれど、陽は短くなった。


もう少ししたら、だんだんと薄暗くなってくるだろう。


校庭のはしっこを歩いていると、あちこちから運動部独特のかけ声が聞こえてくる。


野球部とサッカー部も練習してるから、校庭は男子でいっぱいなイメージだ。


女子はといえば、校門を出て少し歩いたところに、別に作られたテニスコートがある。


4面あるテニスコートは、この学校のウリでもあり、見学したときのパンフレットにも、それがデカデカとのっていた。


もしかしたら、愛里はテニスをやりたくてこの学校を受験したのかな?と最近では思う。


やりたいことがあって受験した愛里とちがって、私は愛里がいるからこの学校を受けたのだから、動機は不純だ。


外から見るテニス部の女子はキラキラしてて、テニスウェアも薄いピンクで可愛らしい。


もしあの中に自分がいたら、もっと学校生活もちがって見えたのかな?とたまに思う。


実際、そんな勇気も体力もないんだけれど、いつも一人で帰っているだけに、もしもを空想する時間だけはたくさんあるというのが悲しい現実だ。
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