浅葱色の鬼
少しお腹がふっくらして
女中仕事を休む日が増えた 


悪阻というものらしく
起き上がることがつらい



そんな私を


「一緒に過ごせる時間が増えて
俺は嬉しいが、辛そうだな」


旦那様は、看病してくれる






ねえ? 旦那様


私たち、いつ結婚したの?


春頃までいた、あの人は
私たちの結婚を知らなかった


結婚してすぐに、記憶をなくしてしまったのかな?

皆が、驚かなかったのは、私の記憶をなくす病を前々から知っていたから?



旦那様は、私が病と知っても
私を妻に迎えてくれたんだよね?




「なんだ?俺の顔に何かついてんのか?」



「いえ…私が眠るまで、そばにいて欲しい」



「今日は、急ぎの仕事はねえから
ずっといる」















そう言ってくれたのに


目覚めると、旦那様の姿はなく



物凄い孤独感






廊下に出ると縁側に腰掛けた

太陽の位置から、今が昼過ぎなのはわかる






「紅音!目覚めたのか?悪い厠行ってた」



旦那様の顔を見た瞬間




私は、たまっていた不安を
吐き出し、泣いてしまった



きっと…



困らせてしまう




嫌われたくない






私は、旦那様をお慕いしている
















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