浅葱色の鬼
「総司と大阪城で療養しようと思う」


やっと起きれるようになった近藤さんが
言ったその言葉に、紅音は珍しく
声を荒げた


「私が治すと言っているだろう!!!
沖田も私が看病する!!!
大阪には、行くな!!!ここにいろ!!!」


「紅音 歳がいれば新選組は、心配ない」


「こいつには、お前が必要なんだ!!」


「その役は、紅音 君に頼むよ」


「行くな」


「紅音 先日の治療 
あの時、君の記憶とこの先が少し見えたよ
心配する気持ちは、わかる
なぜ、命に戻ったのか…
君の気持ちは、俺が良くわかっている
大丈夫!口にはしないよ
だけど、言っておきたい
命は、人の犠牲になってはいけない
命だって、人並みの幸せを生きていい
歳の為だけじゃなく、もう少し
自分の為に、欲張りになりなさい」




ニコニコと穏やかな口調の近藤さんの言葉
静かに聞いていた紅音は



「そっちこそ…
勝手に諦めるなよ… 刀が振れる程に治す
沖田の病だって、私が治す
望め!生きたいと!皆と戦いたいと!
ここにいたいと言え!」



「君と引き替えに、自分の望みを叶えようとは考えていないよ
俺も、総司も 自力で帰ってくるさ!
ハッハッハッハッハッ」



「……どうして」




「新選組局長なんだ!強くあらねばな!」


「はい!一番隊隊長 ケホッですから!」






治療を完全に拒否された紅音は、夕刻まで
仏頂面で廊下に座っていた






「ありがとな あの2人は俺にとって
特別な仲間だ
俺の為に、申し出てくれたんだろ?」


「私の為でもある」


「大丈夫!あの2人は強え!心配ない!」


「私には……」


「いいか?人には、命の知らない力がある!
それを奇跡とか呼んだりする
絶対に無理だという状況を問題なく解決したり、思ってもみない力が発揮されたり!
人は、そんなに弱くねえよ
俺だって、紅音を守れるように
強くなったんだ これからも、もっと
強くなり続ける」



「強くなって欲しくなかった
強くなれば……また、戦に行くくせに」





紅音が、弱々しく吐いた
俺への愚痴


それを受け止めるように

ぎゅっと紅音を抱きしめた




「気安く触るなと言ったはずだ」





「大事に触ってる」




「……」



「クククッ なんか、言い返せよ」



「馬鹿馬鹿しい」




とげとげしい口調なのに
ジッと抱きしめられたままでいるから

おかしくて、また笑った




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