浅葱色の鬼

歳三

長州との戦いに勝利して

屯所に戻ると

茂を抱いたおまさが、山南さんにすがり

泣き崩れていた




「おまさ!!どうしたんだ!?」

「原田君大丈夫!おまさも茂も大事ないよ
土方君……紅音が連れて行かれた」





また、アイツか……




「副長 蒼なら捜せるんちゃう?」


「にゃん!」


蒼が張り切って、捜しに出掛け
俺と山崎、永倉、斎藤で、後を追う


まだ消火できていない
火事の煙で、蒼の鼻が利かなくなり


「ふにゃっ…」


悲しそうに俯いて鳴いていた



「くっそぉ!!!」



永倉が叫んだ




言葉には、現せない


だが、近くにいる


そう感じた



〝迎えに行く〟



約束した




「蒼、こい!」



蒼を腕に抱き、目を閉じた



「力を貸してくれ
紅音が近くにいる
わかるんだ 感じるんだ」



「にゃぁーん!」




蒼が俺の頬を舐めた

その瞬間



体の感覚がなくなった

これが、紅音の言っていた感覚か?



「こっちだ… 」



取り憑かれたように、紅音を感じ進む




「ここだ」


「中見てくるわ!」


「山崎… 奥の右側の部屋だ
壁になってて、わかりにくい部屋だ」


「承知!」




山崎が行くと

蒼がスヤスヤ眠る


「感覚が戻った…永倉、斎藤
すまねえが、もうひと暴れしてくれるか」


「任せとけ!土方さん、蒼は俺の懐に!」


永倉が蒼を大事そうに、懐に入れた

動き難いだろうが

永倉なら、大丈夫だろう


「新選組の平穏の為」


斎藤も頷いてくれた




「お待たせ!間違いない!
また、酷いことされとった……」 




悔しそうな山崎の肩に手を置く





「今度こそ、思い知らせてやる
俺の妻に手を出したこと後悔させてやる!
2度と紅音に、触れさせねぇ!」










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