浅葱色の鬼
〝としさん!梅の花が好きなのね!
いいなぁ~私、梅になりたい!〟


〝好きだよ
紅音の簪と同じ花だからね〟


〝ふふふっ
としさんがくれた簪じゃない!〟


〝紅音〟


〝としさん 戦が終わったら
必ず迎えに… ふえっ きてくれる?〟


〝また泣いてる!
生きて帰ったら、迎えに行くよ
この話になると、いつも泣く
紅音は、泣き虫だね〟


〝だってぇ としさん約束してくれないから…
 言って欲しいの!
必ず帰る 帰ったら、私を妻にするって〟


〝ふっ 僕でいいのかい?〟


〝としさんがいいの!
としさんの妻になりたいの!
としさんと暮らせるなら



私、人になってもいいわ!〟



すぅーっと、紅音が消えてしまう






「紅音!!」

「なんだ?」


紅音を呼び、飛び起きた俺は
目の前にいる紅音を力強く抱きしめた


「怖い夢でもみたのか?」

「紅音…俺、紅音を知ってる」

「……それは違う
土方は、私の記憶を見ただけだ」

「違う!俺は……」

「土方… 私の力は、疲れるだろう
助けてくれてありがとう
もう少し休むといい」

「夢だって言うのか?」


「そう、夢だ
私の見せた夢だ」


「そばにいてくれ」


「眠るまでいるよ」




ふわふわと再び夢の中へ







〝としさん!お願いがあるの!〟


〝なんだい?〟


〝戦に行く前に、私を抱いてくれない?〟


〝紅音は、感覚がないんだろ?〟


〝そうだけど、としさんが
私に触れないから!〟


〝ふふっ 大切にしたいんだ
紅音が、僕にとって特別な人だから〟


〝嬉しい!私もとしさんが、特別な人よ!
としさんの為なら、本当に人になってもいいのよ!?〟


〝人だよ!紅音は不思議な力を持った
ただの女の子だよ〟






紅音…


これが、夢なのか?



俺は……
〝とし〟の生まれ変わりじゃないのか?





目覚めたら、紅音の姿がなく

原田邸に戻ったと知らされた



「紅音が心配していたよ
歳が、混乱しているからと…大丈夫か?」


「俺は、紅音に会ってる」


「そんなはずは、ないだろう?
紅音は、そんな事、言ってなかったよ」


「でも…」


「歳!紅音に気を使わせるな!
紅音の過去を見たから、自分とすり合わせてしまってるんだ!他人の過去を
土足で踏み荒らしては、いけない!
忘れろ… 夢なんだ…」



「かっちゃん… 」



「さぁ!体が鈍ってるぞ!?
久しぶりに手合わせしようか!」




かっちゃんの言うとおりかもしれない

生まれ変わりじゃなかったら

紅音を傷つけることになる






そうだ…



忘れよう











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