浅葱色の鬼
惚れ薬を盛り


土方は、その夜 君菊と結ばれた




が、



翌日には、紅音に纏わり付いていた




「土方さん!紅音を原田邸に送りますから
離れて下さい!!」


不機嫌な沖田と紅音が、屯所を出る


「惚れ薬って…どこで仕入れたの?」

「その先の神社でキツネに貰った」

「はあ? キツネ… 
たった一晩の惚れ薬ですか…」

「それでも… 私には、効果があった」

「紅音さんも使ったの?」

「ふふっ」


沖田に微笑みを返した


「また、宴があれば呼んでくれるか
近藤に聞いてくれ
おまさや茂 皆揃ってな」

「そうですね
紅音さんも、お酒好きですもんね」


「あぁ 唯一、感覚があるものだ
たくさん飲めば、少しふわふわとする」


「茂君は、僕に任せて
今度は、たくさん呑みなよ!」


「そうさせてもらうよ」





原田邸に入っていく紅音の背中を
悔しい気持ちで見送った





屯所に戻ると

近藤に宴のお願いをした



「ねぇ 近藤さん
土方さんが、君菊と浮気したのに
紅音は、ちっとも怒らないし
悲しくないのかな?」


「総司… 悲しいに決まっている
自ら、浮気をさせてまで
歳を諦めようとしているんだ
辛いに決まっているさ」


「僕には、わからないんです
土方さんが、過去を思い出したとして
精神に異常が出るとは、思えなくて」


「紅音には、もう一つ名があるそうで
過去の歳に、教えていたらしい
命は、命同士で結婚するのが習わし
女命が人になるとき、男命に名を教え
命の力を譲るそうだ
紅音は、過去
戦で死にかけた歳を助ける為に
名を教え、自分の力を半分歳にあげた」


「…もしかして」


「そう、歳は…歳の力で紅音を救った
通常受け継がれない記憶があるのは
命の力を歳が持っているから
紅音の見立てでは、今回で力を使い切ったはずだと
歳が紅音の名を思い出して口にしてしまったら… 紅音は、死んでしまうそうだ」


「まるで…呪いみたいですね
2人が夫婦になることを邪魔しているみたいです
悲しいですよ… こんなの…」














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