浅葱色の鬼
早朝


稽古中の
床を踏みならす足音や声よりも
はるかに大きな音が
屯所に響き渡った


何事か、確認するため
幹部をはじめ、隊士らが
音がした炊事場に駆けつけた



「うううっいたぁ」


「紅音!!!」



右足首をさする紅音と
オロオロと慌てる女中の様子
そのまわりの状況から、近藤が



「踏み台から落ちたのかい?」

「そうなんです!すみません!!
隊士さんを呼べば良かったです!!」


「私が、しゃしゃり出たのだ、気にするな」


土方が紅音の足を確認すると
酷い腫れ様だった



「山崎に治療して貰う」



紅音の言葉に、幹部らは目を丸くした




土方が紅音を抱きかかえた


「歩けねえだろ 連れて行く」


「すまぬ」



山崎が治療する間
後ろから土方が紅音を膝に乗せていた



「土方 稽古してたんじゃないか?」

「おう」

「私に汗をつけないでくれ…」



しぶしぶ紅音を床におろした



「クスッ 言っただけだ」


「なんだよ!!まぁ汗かいた後だ
控えておく」


「ここまで連れて来てもらったんだから
汗は、もうついただろう」


「こんなに腫れてたら、痛いやろ?
自分で治したらええのに」


「力は、使いたくない
使わなくても、これで治るのだろう」


「しばらく治らんで?
不便やし、痛いままや」


「仕方ない 私が足を滑らせたのが悪い」


「なんで炊事場にいたんだ?」


「私は、女中だ
今は、繕い物や洗濯、掃除
皮むきなどしか出来ないが
人になったら、料理を作る
もう、何品も作り方を覚えたぞ」


紅音が笑うと土方が紅音の頬を撫でる



「いちゃつかんといて下さい!
よしゃ!出来上がり!」    ペシッ


「痛い!!」


「っ!!!堪忍!!つい!!」












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