浅葱色の鬼
寝てるだけなんて、勿体ない気がして
のそのそ抜け出す

襖を開けると
外の風がふわり


「うわぁ ふふっ」


「んー、はよ」


「おはよう 遊んでくる」


「おう」



すっかり日が昇り、皆の声がした


「にゃあ」


「蒼 おはよう
ふふっ お前もあったかい!」


日向と影を触り比べたり
洗濯をして、水の冷たさを確認した


全てが楽しくて、キラキラして見えた


女中達と料理を作った


「美味しい」


皆が、そう口にする度
心がぽかぽかした




翌日

御陵衛士が、離脱した



「藤堂、ありがとう
斎藤、元気でな」



すごく寂しくて、泣いてしまった



「泣くな 離れてても
俺達は、心が1つなんだ」



土方が、私の肩を抱いて、そう言った


私は、土方へ視線を合わせた



「言ったな?
皆も聞いたな?」



ジトッと睨む私に、土方が頬を引き攣らせ


「なんだよ!!」


「私が死んでも、泣くなよ
いなくなっても、荒れたりするなよ
心1つなんだろ?」


「ったく!泣きながら、変な知恵使うな!」


「心1つ… 良い言葉だな」



明日には、忘れてしまう
思えておけたらいいのにな



…土方へのこの気持ちも忘れるのだろうか



「今日も一緒に寝ていいか?」


「…いいけど」


「ありがとう」





普通に女中の仕事をこなす

それだけで、楽しい









「土方!あれ、して欲しい」


私は、冷えた手を出す


「真っ赤じゃねぇか!!」


「はぁー」


「それそれ!
あったかい!!ふふっ」



私の手は、土方に包まれ
あったかい息で温められた



「幸せ」


「ん?」


「すごく幸せだ」


「そうか」


「土方 忘れてしまうのは、勿体ないな
こんなに楽しい毎日が
楽しくなくなると想ったら、さみしいが
人になって良かった」


土方が、私を強く抱きしめる


どんな風に記憶がなくなるのか


100日までをどう生きられるのか


私だって、不安はある



「そばにいて欲しい」

「ああ そばにいる」






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