英雄は愛のしらべをご所望である
セシリアは驚きのあまり声にならない悲鳴をあげる。
視界を横切ったものの正体は、ウィルの腕だった。
セシリアの手首を掴むウィルの手に力が入る。
「いっーー」
耐えきれず漏れた痛みを訴える声に反応してか、ウィルの睫毛がピクリと動いた。
瞼がゆっくりと持ち上がり、黒い瞳が顔を出す。
「ウィル?」
起きたのかと思いセシリアは声をかけたが反応が鈍い。
もしかして寝ぼけているのか、という考えがセシリアの頭によぎった。
そのセシリアの予想は正解だったらしい。
「んあ……セシリア、か」
掠れた色っぽい声でそれだけ言うと、ウィルは掴んでいた手を引っ張るようにぐいっと引き寄せた。
手首を捕まれているセシリアが抵抗できるはずもなく、セシリアは勢いそのままにウィルの胸へと飛び込む。
そして、何を考えているのか。ウィルはセシリアを抱くように背へと手を回すと、パタンとセシリアもろともベッドに横になった。