英雄は愛のしらべをご所望である
「ウィルね。ペンダントをつけてたの。チェーンが所々痛みかけてたから、ずっとつけていたんだろうなぁ」
「えっ……」
セシリアの言葉にリリーは顔を強ばらせ、声を詰まらせる。
その反応にセシリアは一瞬驚きを見せ、すぐさま誤解に気がついた。
「あっ、リリーの思ってるのとは違うと思うよ! 親からの贈り物」
「な、なぁんだ。びっくりした」
正確には『たぶん』親から贈られた物なのだが、事情を知らないリリーにそこまで言う必要はないだろう。
ウィルは孤児院に引き取られた時、何も個人を表すものを身に付けていなかった。
まだ産まれて数ヶ月だろうという赤子がお包みに包まれ、孤児院横の教会に置き去りにされていたのだ。
ただ、その時唯一ウィルとお包みの間に隠すように挟まっていたのが、三日月が型どられた丸い銀のペンダントトップ。
至ってシンプルな造りだったが、裏に文字が書かれていて、身元のヒントなるのではと思われていた。
しかし、全く読むことができず、教師であるセシリアの父も初めて見る文字だと言っていたので、解読を諦めていた。