英雄は愛のしらべをご所望である

「大切につけてるって知って、驚いちゃった……」
「そう? 親からもらったものを今でも大事にしてるなんて素晴らしいことじゃないかしら?」


首をかしげたリリーに 「そうね」と答えながらも、セシリアは複雑そうな表情で瞼を伏せる。

好きな男性の知らない所を発見したというのに、全く嬉しそうではない。
その思い詰めた姿のセシリアに、リリーは心配げな視線を向けた。


「セシリア? ……大丈夫?」
「……ねぇ、リリー。私、どうしたらいいのかな。昔は、ウィルの一番側にいるのが私で、何でも知ってると思ってた。再会した後だって、幼なじみとして、周りにいる女性よりも近い距離で接してくれることに内心喜んでたし、ウィルのために何かしたいと本気で思ってた。きっと心のどこかで、自分は他の人よりも特別だと思ってたんだ。でもーー」


そこまで発してセシリアは言葉を詰まらせる。指先が震えるのは寒さのせいではないだろう。

リリーがセシリアの側に寄り、そっと背に触れた。
その瞬間、張り詰めていたものがプチンと切れるように、セシリアは身を縮め、喉を震わせる。


「ーーもうこれ以上、踏み込めない」
「っ!? ど、どうして?」
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