英雄は愛のしらべをご所望である


ただ、こんな扱いではあるが、セシリアはラルドを尊敬しているし、彼の優しさにも感謝している。

村から連れ出してくれたことはもちろん。旅の間は、危険なことから守ってくれるし、文句を言いながらも練習につきあってくれる。
今だって、女性の行方不明事件が多発してるとウィルに言われたと伝えてから、嫌いな買い出しにも付き合ってくれていた。

なんだかんだ言って、ラルドはやはり大人で、頼りになるのだ。
セシリアだって、早く一人前になって、ラルドに成長した姿を見てもらいたい。

それに、頑張っているウィルにだって、子供の頃とは違った姿を見せたいじゃないか。


「じゃあ、明日も練習に付き合ってくれますか?」
「明日? あー、明日は……忙しい」
「嘘つくなっ!」
「えー、だって、寝たいもーん」


口を尖らせるラルドを見て、セシリアの心に一瞬『こいつ、本当に大人か』と疑問が浮かんだのは致し方ない。

これ以上の押し問答は時間の無駄だと判断したセシリアは、ラルドとの距離を詰め、何も持っていない手でラルドの袖を掴んだ。


「まずは買い出し! 行きますよ!」


ぐいぐいと引っ張られ、大人しくついてくるラルド。こんなやり取りも旅の中で慣れてしまった。
ラルドを村にいた大人と同じ括りで見ては駄目なのだ。セシリアは小さなため息を一つ溢した。

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