英雄は愛のしらべをご所望である


王都の街は今日も変わらず賑わっている。昼となれば、買い物客以外にも食事を目的にする者や観光客だっている。
視界は人で溢れ、ラルドの袖を掴んで進むほうが、案外早く歩けたりもする。

セシリアは人とぶつからないよう前を見据え、目的の店へとひたすら足を進めた。
けれど、引っ張られるだけのラルドは、誘導されることに味をしめ、またふらふらと視線を泳がせ始める。そして、あるものを見つけ声を上げた。


「あれ? あれって確かセシリアの知り合いの騎士様じゃない?」
「えっ!?」


セシリアはラルドの言葉を聞き逃すことなく振り替えると、すぐさまラルドの目線の先を追う。
店先で店主らしき男性と言葉を交わしている騎士服の二人組。一人はセシリアが見たことのない騎士だが、もう一人はセシリアが会いたくて仕方のなかった人物だった。


「ウィルだ!」


真剣な表情で言葉を交わしている様子からして、聞き込みかなにかだろうか。
店の客達がそわそわとウィル達の方を見ている。騎士を近くで見る機会は結構あるが、彼らの向ける視線はセシリアのものと似ている。


「近くに行くかい?」


セシリアの喜び様に何を思ったのか、ラルドがニヤリとした笑みを浮かべ魅力的な提案をしてきた。
確かに、村にいた頃のセシリアならば声をかけていたかもしれない。


「……いいです」


セシリアは静かに首を横に振った。
話したいのは山々だ。けれど、セシリアは自分を押し付けるだけの子供ではなく、ウィルを支えられる大人の女として側にいたかった。

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