英雄は愛のしらべをご所望である
セシリアはズキリと胸が痛むのを感じた。
シルバの言う通り、セシリアのウィルに対する気持ちはとてもわかりやすいらしい。シルバはもちろん、事情を知らない段階のリリーやラルドにもバレているくらいだ。
だけど、ウィルには伝わらない。伝わっていても気づかないフリをしているのかもしれない。
それが残念でもあり、言葉にしていないのだから当然でもあるのだ。
「ウィルの鈍感さは相当だろうし、はっきり伝えないと駄目なのかもね」
セシリアはシルバの言葉に曖昧な笑みを返した。
妹以上の関係を望み、女性として扱われたことに喜んでいるくせに、はっきりと気持ちを伝えない、ちぐはぐな自分に嫌気がさす。
自分が一人前の奏者になれたら、なんて考えたこともあったけれど、それはある種の逃げだ。
再会し、以前のように話していられる今の関係を壊したくないというのも、自分の本心とズレていることをセシリアは理解している。
「私の気持ちは、ウィルにとって迷惑に……あ、いえ、今のは聞かなかったことにしてください」
『ウィルにとって迷惑にならないでしょうか?』
これは明らかに失言だ。シルバにどんな返答を期待しているというのだろうか。
『なる』と言われればショックをうけるのか? 『ならない』と言われたって、素直に喜べないくせに。