英雄は愛のしらべをご所望である
シルバはウィルの色々な話を聞かせてくれた。
訓練所での様子や寮での生活、ウィルの剣の腕がどれだけ凄いのかということも。
セシリアはただただ感心するしかなかった。
一人、村を出ていってから、ウィルは今の地位を手に入れるまで、どれだけの努力をしてきたのだろうか。きっと想像なんてできないくらいの苦労をしているはずだ。
セシリアのように誰かに守られることもなく、本当の意味で独り立ちをした。
「……ウィルは凄い。自分の力で、手にいれたんですね」
感嘆の息を漏らしながら、ウィルのことを想い、目尻を緩めるセシリア。そんなセシリアをシルバはじーっと眺めていた。
「本当にセシリアさんはウィルのことが好きなんだね」
「へっ!?」
慌てて我に返ったセシリアの目に写ったのは、からかいを含んだ笑みを浮かべるシルバだ。
途端にセシリアの体温が上昇していく。
「な、なにを、突然……」
「いやぁ、だって、ウィルのことを自分のことのように喜んでるから。こんなに想ってくれる人がいるのに気づかないウィルって、大馬鹿者だなぁ、と思って」