クールな王太子の新妻への溺愛誓約

◇◇◇

「マリアンヌ、そろそろ帰るぞ」

「はい」


再び塔のある入口まで戻ってきたふたりが、馬車に乗り込もうとした時だった。


「王太子殿下! マリアンヌ様! お待ちくださーい!」


幼い子供の声が聞こえ、マリアンヌが馬車に掛けた足を戻す。

見てみれば、十歳くらいの男の子が片手に空のグラス、もう片方にボトルを持ちこちらへ駆けてくるところだった。
マリアンヌがその場にしゃがみ込むと、男の子がそこに飛び込む勢いでやってくる。息を弾ませてグラスをぐいと突き出した。


「これ、父と母が作った葡萄酒なんです! マリアンヌ様、ぜひ飲んでください!」


キラキラと輝かせた目でマリアンヌを見つめる。


「ありがとう。そんなに慌てなくても大丈夫よ」


マリアンヌは快くグラスを受け取り、葡萄酒を注いでもらおうと傾けた。

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