クールな王太子の新妻への溺愛誓約
ところが、そこで男の子の手元が狂う。
「あっ!」
ボトルから注がれた葡萄酒が、マリアンヌの左腕に掛かってしまったのだ。あっと思う間もなく、ドレスの袖に赤い染みが広がっていく。
「――ごめんなさい!」
一瞬にして男の子の顔が曇る。
「このくらい平気。なんてことないわ。気にしないで。ちょっと貸して」
そう言いながら、マリアンヌは泣きそうになった男の子からボトルを借り、自分でグラスに注ぐ。それを先にレオンへ「どうぞ」と手渡した。
「この子は、マリアンヌに飲んでほしくて急いで持って来てくれたんだ。マリアンヌが飲むべきだろう」
「ですが……」
レオンを差し置いて飲むのも気が引けてしまう。