クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「気にせずに飲んでやれ」


そうまで言われて遠慮し続けるわけにはいかない。マリアンヌは「では失礼いたします……」と、グラスにそっと口を付けた。酸味が若干きつい気もしたが、口当たりはそれほど悪くない。


「おいしいわ」


マリアンヌが微笑むと、男の子は「やった!」と飛び上がった。


「お父様とお母様によろしく伝えてね」


男の子の手を握り、喜び勇んで走り去る背中を見送る。その向こうには彼の両親か、こちらに向かって恐縮したように頭を上げ下げしていた。


「マリアンヌ、これで拭いた方がいい」


ふと、レオンがハンカチを差し出す。


「ですが、ハンカチが汚れてしまいます」

「それがハンカチの役目だろう」


レオンはクスッと笑った。

< 103 / 286 >

この作品をシェア

pagetop