クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「気にせずに飲んでやれ」
そうまで言われて遠慮し続けるわけにはいかない。マリアンヌは「では失礼いたします……」と、グラスにそっと口を付けた。酸味が若干きつい気もしたが、口当たりはそれほど悪くない。
「おいしいわ」
マリアンヌが微笑むと、男の子は「やった!」と飛び上がった。
「お父様とお母様によろしく伝えてね」
男の子の手を握り、喜び勇んで走り去る背中を見送る。その向こうには彼の両親か、こちらに向かって恐縮したように頭を上げ下げしていた。
「マリアンヌ、これで拭いた方がいい」
ふと、レオンがハンカチを差し出す。
「ですが、ハンカチが汚れてしまいます」
「それがハンカチの役目だろう」
レオンはクスッと笑った。