クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「……わからないんです」
レオンは眉間にくっきりと皺を寄せて、得心のいかないような顔をした。
「わからないとはどういうことだ」
真剣な物言いに、マリアンヌが肩をビクンとさせる。
やはりレオンはこの傷痕が気に入らないのだ。そう悟ったマリアンヌは、どうしようもなく心細くなる。
「……悪い。ついきつい言い方になったな」
怯えるマリアンヌに気づいたレオンは、首を軽く横に振りながら息を吐き出した。自分を懸命に落ち着けようとしているようにも見える。
「いえ、私の方こそごめんなさい」
「幼すぎて覚えていないということか」
「違うんです。私……記憶がないんです」
そう言った途端、レオンの顔がさらに険しくなる。
マリアンヌはそう告白してしまってから、自分の立場がさらに危ういものになったと感じた。