クールな王太子の新妻への溺愛誓約
ゆっくりと馬が動き始める。街が遠ざかり、窓の外には再び森が広がった。
レオンはずっと押し黙ったまま。前を真っ直ぐ見据えた横顔はなにか考え事をしているように見え、マリアンヌが見つめることにも気づかない様子だった。
途方もない不安がマリアンヌに押し寄せる。
(このままレオン様との結婚が取りやめになってしまうかも……)
そう思うと、いてもたってもいられなくなる。
「……レオン様」
思い切って声をかける。
不意を突かれて名前を呼ばれたレオンは、形容のしがたい表情をしてマリアンヌを見た。
「レオン様のお心にクレア様がいたままでもいいです。私を愛せなくてもいいです」
マリアンヌは切迫した目つきで、すがるようにレオンを見つめる。
「……マリアンヌ?」
なにを言うのかとレオンは当惑しているような顔だ。その瞳が揺れる。