クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「ただ……」


レオンは先を言い渋った。視線をマリアンヌから前へ戻し、レオンは頭を悩ませるように眉間にぐっと力を込めた。

いったいなにを言われるのかと、マリアンヌに緊張が走る。


「……ただ?」

「ベティに聞きたいことがある」

「ベティにですか?」


どうしてここでベティが出てくるのだろう。マリアンヌはゆっくりと首を傾げた。


「ああ」


レオンは頷くと、それ以上なにも話さなくなってしまった。

その隣でマリアンヌは、川面に揺れる落ち葉のごとく心許ない気持ちで馬車に揺られるのだった。


宮殿の前に馬車が付けられると、中から侍従たちが出て来た。その中にはベティもいて、レオンは彼女を見つけるなり、「ちょっと聞きたいことがある」と着いてくるよう示した。

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