クールな王太子の新妻への溺愛誓約

マリアンヌの袖を直すと、ベティに一歩近づいた。


「マリアンヌには十二歳以前の記憶がないそうだな」


ベティはハッとしてマリアンヌを見た。そのことを話してしまったのかと問いたいような表情だ。
マリアンヌはベティに向かって頷いた。


「……そうです」


レオンに答えるベティの唇が震える。不安でたまらないといった様子だ。
ベティがなにを恐れているのかわからず、マリアンヌはただ黙ってベティを見つめた。


「病が原因だと聞いたが、本当にそうなのか?」


マリアンヌは、レオンがなにを聞こうとしているのか検討もつかない。ベティからなにを聞き出したいのか。
そして、ベティはなにを困っているのか。


「……はい、高熱に倒れられて……目が覚めた時には記憶を失っていらっしゃいました……」


レオンの顔を見ず、ベティは目線を下げたまま答えた。

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