クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「……レオン殿下の……おっしゃるとおりでございます……」
ベティは鼻をすすった。
(それじゃ、私はいったい誰なの……? 突然現れたって、どういうこと?)
疑いもしない自分の出生の秘密を聞かされ、マリアンヌは激しく動揺してしまった。
呼吸が激しくなる。酸素をいくら取り込んでも、肺が飢えたように動いているようだった。
レオンがさきほどマリアンヌに優しく微笑みかけたのは、もうこれで最後だからなのかもしれない。
記憶がないばかりじゃない。火傷の痕があるだけじゃない。どこの誰ともわからないような女が、フィアーコの妃になれるはずがないのだ。
(ここを追われたら、私はどこへ帰ればいいの?)
途方もない寂しさに襲われ、気を確かに持つことが困難になる。
「ベティ、もう少し詳しく話してくれないか」
レオンに促されて、観念したようにベティはゆっくりと話し出した。