クールな王太子の新妻への溺愛誓約
七年前のある日のこと。国王夫妻が、ひどい怪我を負った女の子を旅の途中に保護したと王宮に連れて来たそうだ。
その子は身ぐるみを剥がされ、ボロボロになった下着姿で意識もない。治療は施したものの、いつ命を落としてもおかしくないほど悪い状態だったそう。
そうして生死の境をさまよい、危険な状態が一週間ほど続いたある晩のことだった。永遠に開くことのないだろうと思われた瞼が、ふと開かれた。
ところが彼女は自分の身になにが起きたのか、いっさいを覚えていない。名前すらわからなかったと。
長らく女の子をほしがっていた国王夫妻は、それならば自分たちの元で育てていこうと決意し、実の娘として大事にしたそうだ。
このことに関してはかん口令が敷かれ、王宮内の誰もが胸にひっそりとしまい込んだ。国民に対しては、生まれた時から病弱だったことから、王女がいることをずっと隠してきたと説明し納得してもらったということだった。
王宮内でなにも知らなかったのは、マリアンヌただひとりだけ。
ベティは、火傷の痕のことを知らなくて当然だったのだ。ピエトーネの国王夫妻に拾われる以前の火傷なのだから。
マリアンヌは、ベティの話をどこか他人事のように聞いていた。現実味がなさすぎて、あまりにも信じられないことだったから。