クールな王太子の新妻への溺愛誓約

やはりレオンではなかった。
もしもレオンがマリアンヌのために用意してくれたのなら、さきほどのレオンの態度も気のせいだろうとも思えたが。

マリアンヌは、ささやかな期待を打ち砕かれてしまった。


「いえ、マリアンヌ様。間違えました。レオン殿下がご用意されたと伺っております」


ベティが咄嗟に訂正する。
だがそれはマリアンヌの気持ちを察したベティの心遣いだろう。ベティは嘘を吐く時に鼻の穴が膨らむのだ。今も見事に大きく膨らんだ。


「あ、いいの、気にしないで、ベティ。ちょっと聞いてみたかっただけだから」


沈んだ気持ちを隠すように明るく振る舞う。結婚を前にして暗い気持ちにはなりたくない。


「ところで」


ベティは雲行きの悪くなった空気を変えようと、笑みを浮かべて話し出す。


「生のレオン殿下はいかがでございましたか? 侍女たちの話によりますと、それはもう見目麗しいということでございましたが」

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